免疫たまごとは

動物は外から侵入してくる異物（細菌やウイルスなど）から身を守るために、 異物を認識して無毒化したり、排泄する自己防衛システムがあります。異物である「抗原」に対して「抗体」 とよばれる蛋白質を産生し、攻撃することを「抗原抗体反応」といい、免疫システムのひとつです。 血液中に産生された抗体は，哺乳動物の場合は母乳を通して子供に受け継がれます。鳥類の場合は、 親鳥が獲得した血液中の免疫抗体は，卵黄に含まれます。 卵黄に含まれる抗体は哺乳類のIgG（免疫グロブリン)とは性質が若干異なることからIgYと表されます。

免疫卵とは病原菌に対する卵黄抗体「ＩｇＹ」を含んでいる鶏卵です。免疫卵を産卵させるには、 抗体生産能力が高い品種のニワトリを厳選し、ワクチンを接種しながら徐々に強い免疫力を持った成鳥になるように 育てていきます。これはヒトの予防接種と同じしくみで、これによりニワトリの体内に特定の抗体がつくられていきます。

鶏は大量に飼育でき、この鳥類に特徴的な免疫システムを利用することで目的の抗原に対する特異抗体を大量に 調整することが可能となりました。

ピロリ菌を排除！

胃は強い酸性を示す胃酸のせいで生物は生息できないといわれてきました。しかし、 近年発見されたピロリ菌（ヘリコバクター・ピロリ　Helicobacter pylori）は菌表面に強いウレアーゼ活性をもち、 胃酸を中和することにより胃の中に住み着きます。また、このウレアーゼは激しいぜん動運動をする胃の中で、 ピロリ菌が胃の粘膜に付着する接着因子ともなっています。

このウレアーゼを抗原として鶏にワクチンすることにより、ニワトリの体内にウレアーゼの抗体ができます。 その鶏から生まれた卵（免疫卵）の黄身には同様に「抗ピロリ菌ウレアーゼ抗体IｇY」が含まれており、 ピロリ菌の胃壁接着を防ぐ機能を持っています。この「抗ピロリ菌ウレアーゼ抗体IｇY」によってピロリ菌は 胃の粘膜に付着することができず、食べ物などと一緒に排出されます。

現在ピロリ菌の除去には抗生物質が使われています。そのため腸内の善玉菌も影響を受け、下痢などの副作用や 抗生物質に対する副作用を起こす人がいます。抗原抗体反応はカギと鍵穴のような関係であり、 ウレアーゼ抗体はピロリ菌の表面にあるウレアーゼにだけ反応しますので、副作用の心配がありません。

ピロリ菌の胃壁接着を防ぐ機能成分「抗ピロリ菌ウレアーゼ抗体IgY」」を含んだ機能性鶏卵「免疫卵」は、 ピロリ菌用「抗体食品」の原料として実用化されています。